言わずと知れたルキノ・ヴィスコンティの後期ドイツ三部作の最終章。
トーマス・マン原作。 退廃!高貴!!残酷!!!
ドイツの老作曲家アッシェンバッハは人生と自身の芸術論に行き詰まり、
夏のべニス・リド島へと単身静養へ訪れる。
そこで偶然、同じホテルに滞在する美少年・タージオに理想の美を見つけてしまう。
瞬間的・悪魔的な美は一瞬にして老作曲家を虜にしてしまう。。。
一度はべニスを後にするが、手違いにより舞い戻るはめになる。
しかしベニスはその夏、シロッコによる疫病が街中に蔓延し、
観光客が遠のく事を恐れる地元ベニスの人々はそれらをひた隠しにする。
老作曲家は失意にも疫病に冒され、蝕まれて、自分の老いを感じつつ
届かぬ少年への思いは頂点へ。。。
そしてまるで疫病の戦火にあったようなベニス本土を朦朧として少年を追いつづける。
最後には死化粧をして髪を染め、蔓延の笑みを浮かべて砂浜に横たわる。
アドリア海と太陽は美少年・タージオとともに余りにも美しく残酷に輝いているだけなのである。。。
深夜ホテルのロビーにあるピアノでタージオが「エリーゼのために」を弾いている。
徐々に老作曲は精神も肉体も疫病に冒されてきて、
疫病の蔓延の事をホテルの従業員に聞いても教えてくれない。。。
そのとき故郷に残してきた最愛の妻の事、
事故により死に別れてしまった幼い一人娘の事、
そしてドイツで立ち寄った娼館の事を突然に思い出す。
女主人に導かれて入る個室では、ひとりの娼婦が調律の狂ったピアノで
「エリーゼのために」を弾いて待っている。
そして実際には自身の倫理観・芸術観と相容れず、その娼婦を抱く事はなく、
自己に嫌悪を抱いて娼館を後にする。。。
気が付くとホテルのロビーには最初からタージオもピアノも存在していなかった。。。
主人公アッシェンバッハは作曲家マーラーがモデルであり、
全編にわたってマーラーの美しい交響曲が流れている。
この深夜のホテルでの回想場面だけにベートーベンが使われているわ。
ピアノ小曲「エリーゼのために」は老作曲家が芸術論的にも肉体的にも絶望的な限界を感じ、
疫病に蝕まれて徐々に錯乱していく精神状況を見事に現していると言えるわね。。。


ヴェニスヴィエンナーレ2007